
はじめに:なぜWHは今、停滞しているのか
EVE Onlineの中でも最もユニークな宙域のひとつ、ワームホール(J-Space、以下WH)。ローカルチャットも存在せず、常に接続が変化し、資産の安全も保証されない──そのハードコアな魅力でかつて多くのプレイヤーを惹きつけてきた。
しかし現在、WH宙域は深刻な停滞期に入っている。
r/Eveでは「WH宙域をどう改善すべきか?」というスレッドが活発な議論を呼び、多数の元・現WH住民たちが問題の根本と解決策を語り合った。本記事では、その議論の要点を整理しながら、WH宙域の現状と可能性を掘り下げていく。
現状の問題点:複合的な原因が重なる停滞
1. 収益性の崩壊 ── Kスペースの強化がWHを相対的に弱体化
WH住民からの最も多かった声は「報酬がKスペース(通常宙域)と比べて割に合わない」というものだ。
低クラスWH(C1〜C3)では、1サイト当たりの収益は約10M〜15M ISKほど。一方、ハイセクのアビサルポケットをクルーザー1隻で回せば、ほぼ同等かそれ以上の収益を、はるかに安全な環境で得られる。
あるユーザーはこう述べている。
「正直、新しいリクルートに対して、今の低クラスWHに経済的なメリットがあると伝えるのはほとんど嘘になってしまっている」
問題はCCPがWHを直接ナーフしたというよりも、Kスペースの収益源を次々と強化した結果、相対的にWHが不利になったという点だ。ハイセクでAFKナエス採掘ができるようになったことで、WHでリスクを取って採掘する理由はほぼなくなった。ガス、サルベージ、探索ドロップ……主要な収入源がことごとく価値を失っている。
2. シタデルが壊したWH文化 ── 「BUSHIDO」の消滅
シタデル(アップウェル構造物)が実装される以前、WHプレイヤーはコントロールタワー(POS)と呼ばれる旧型ストラクチャーを拠点としていた。POSは収容量と機能に限界があったため、1つのWHに複数のコープが共存する状況が自然と生まれた。
あるコープは採掘に特化し、別のコープはPvPを行い、互いの存在を容認しながら共存する──スレッド主曰く「WH武士道」と呼ばれるカルチャーがそこにあった。
シタデルの登場によって、この文化は実質的に消滅した。シタデルは事実上無制限の資産保管・ドッキングを可能にし、大規模なコープが同時に複数のWHを完全掌握できるようになった。さらにシールドリーン後のタイマーが7日間から約2.5〜3日間に短縮されたことで、小規模グループへの立ち退き(Evict)がより手軽になった。
3. 大規模グループによる支配 ── 「ドーナツ」問題
HK(Hard Knocks)、Lazerhawks、NoVacanciesといった高クラスWHの巨大グループが実質的にJ-Spaceのヒエラルキーを支配しており、新興の小規模グループがWHに定住しようとすると、すぐに立ち退きの標的になるという状況が続いている。
「大きなグループは小さなグループが育ち始めると、最初の数週間で追い出してしまう。新しいプレイヤーが入ってくる余地がない」
これはNullSecの「ブルードーナツ」問題と本質的に同じ構造だという指摘も多い。
コミュニティから出た改善案
案1:シタデルを廃止し、WH専用ストラクチャーを導入する
投稿者Ship_Commanderが提起した最も根本的な提案。シタデルをWH宙域から撤廃し、制限付きのWH専用ストラクチャーに置き換えるというものだ。
具体的には:
- ドッキング可能人数の上限設定
- キャピタル艦ドッキングの制限または専用モジュール必須化
- テザリングの無効化またはオプション化
- ストレージ容量の上限設定
目的は「意味のある制限を取り戻す」こと。POSのような自然な制約を現代的な形で再現することで、大規模グループが1つのWHを支配しにくい環境を作る。
賛否は割れているが、WH古参プレイヤーからの支持は高い。反対意見としては「POSに逆戻りするだけ」「新規プレイヤーへの魅力が下がる」といった声もある。
案2:スリーパーサルベージとブルールートの報酬を再設計する
C5・C6の高クラスWHでは大量のサルベージが副産物として発生し、市場を飽和させている。結果として低クラスWH住民の主要収入源だったサルベージ価値が崩壊した。
提案されているのは「逆スライドスケール」の導入:
- 高クラス(C5・C6)ではサルベージドロップを削減または廃止
- 低クラス(C1・C3)ではサルベージを主要収入源として強化
これにより、低クラスWHの独自の経済的価値を取り戻す狙いがある。
案3:新たな「深宙」J-Spaceゾーンの創設
Kスペースへの接続を一切持たない、完全閉鎖型のJ-Spaceゾーンを新設するというアイデアも提案された。
- 全システムがシャタード仕様
- 固定穴は同ゾーン内の他システムにのみ接続
- Kスペースへの出口なし:迷子になるリスクが実在する
- 入口はC1〜C3の低クラスWHからのランダムコネクションのみ
- 高報酬の専用サイトを設置
Pochvenとも違う、遊牧スタイルのプレイヤーや、真の「未知の宙域」を求めるプレイヤーに響く提案だ。「本当の深宇宙」を実現できると言う声もある。
案4:WHの接続がKスペースに影響を与える仕組み
現状ではNullSecプレイヤーはWH接続を発見するとほぼ反射的にロール(穴つぶし)してしまう。これを「機会」と捉えてもらうために、WH接続時にその宙域でプラスの効果が発生する仕組みを提案するユーザーもいた。
例えば:
- WH接続中は、接続先のKスペースでサイトスポーン率が上昇
- 接続しているWHのクラスに応じて、高品質のサイトが発生
- 複数のWH接続が重なると相乗効果が生まれる一時的なホットスポット化
「WH=邪魔者」から「WH=チャンス」へのマインドセット変換を促す設計だ。
案5:低クラスWH向けの新コンテンツと探索要素の強化
デイトリッパー(日帰り探索者)の視点から、スリーパーの非戦闘サイトや探索・戦闘ハイブリッドサイトの追加を求める声もあった。
現状では低クラスWHでの探索はImpSovNullのレリック/データサイトと比べて魅力が薄い。WH固有のユニークなルートやドロップを持つサイトを追加することで、より多様なプレイスタイルの受け皿になれるという考えだ。
議論から見えてくるもの
このRedditスレッドで最も印象的だったのは、多くの問題が「CCPの直接的なナーフ」よりも、ゲーム全体のバランス調整の積み重ねによる間接的な弱体化に起因しているという点だ。
WH宙域は何年もの間、CCPから目立ったアップデートを受けていない。その間に周辺宙域が強化され続けた結果、リスクとリターンのバランスが崩れた。
また「プレイヤー文化の問題」という視点も重要だ。大規模グループによる支配、Evict文化の蔓延──これはシステムの問題であると同時に、コミュニティの問題でもある。いくつかのコメントでは「巨大WHコープが自主的に解散するか、レンタルプログラムをやめない限り、根本的な改善は難しい」という厳しい声もあった。
まとめ:WH宙域の可能性は失われていない
WH宙域が持つ本質的な魅力──ローカルなし、常に変化する地形、真の危険性──は今も健在だ。問題はその魅力を支える経済的な基盤と、新規プレイヤーが参入できる余地が失われていることにある。
CCPへの期待として、コミュニティが求めているのは大きく3点に集約される。
① 低クラスWHの収益性を現代水準に引き上げる
② 大規模グループによる支配を構造的に制限する仕組みを導入する
③ WH固有のユニークなコンテンツを新たに追加する
WH宙域はEVE Onlineの中でも最もEVEらしい空間のひとつだ。この独特の世界が再び多くのプレイヤーで活気づく日を、多くのパイロットが心待ちにしている。
本記事はr/Eve のスレッド「How could wormhole space be Improved?」の議論を元に作成しました。
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