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【EVE活- 番外編】3兆ISKファンドマネージャーに学ぶPLEX価格とサブスクの仕組み - donichi

【EVE活- 番外編】3兆ISKファンドマネージャーに学ぶPLEX価格とサブスクの仕組み - donichi

本記事はOZ_Eveの”The current PLEX price and CCP strategy explained”を元にNACHO AllianceのDiscordで話題になった内容を脚色した物です。

結論は、Ωの購入を考えている人は次のタイミングを待ちましょう。

  1. 3月、6月、9月、12月末にはΩ+MCT 50%オフのセールがある。
  2. New Eden StoreでΩのセールが続いているとPLEXのセールが続くので、MCTをやっていない人はPLEX購入→New Eden StoreでΩ購入もあり。

ということです。

JITAから一歩も出ない。 そんなEVE Onlineの遊び方があるのをご存じだろうか? 

トレーディングである。

商品の選定を行い安く仕入れ、高く売る。 トレーダーによってはJitaで安く仕入れ、運び屋にはマージンを渡してAmarrまで輸送してもらいそこで高く売る。

EVE経済圏でゲームアイテムの売買の差額でISKを稼ぐPvEもPvPもない世界である。 それが楽しいのかと思うかも知れないが、こんな遊び方があるのもこのゲームの裾野の広さだろう。

そんな彼らが気にするのはプレイヤー人口とPLEXである。 プレイヤー人口はEVE経済圏の規模に影響し、リアルマネーで購入するPLEXはゲーム内貨幣ISKの価値に大きく影響する。

その土台となるのはEVE Online開発・運営会社CCP(韓国Pearl Abbys関連会社)の経営状況である。 EVE経済圏で中央銀行としても機能しゲームバランスを適正に維持する役割を持つ。 そんな彼らがPLEXを安売りする背景は何なのか、3兆ISKファンドマネージャーを名乗るOZ_Eve氏※1の動画から紐解いていきたいと思う。

Judgement Day

2013年の3.1万人のプレイヤー数(ユーザではなくログインするアカウント数とみてもらいたい)をピークに下降線をたどり、COVIDの巣ごもり需要で盛り返したプレイヤー数は2020年には2.4万人まで盛り返した。 プレイヤー数下降の原因は諸説有るがフォーラムには新しいコンテンツがないことやゲームバランスへの不満を述べる書き込み※2が多く見られる。 

だが、一番の原因はサブスク/Ω料金の値上げだろう(2022年5月)。 インフレーションにともなうコスト増などを理由に$15から$20への値上げである。 その影響はプレイヤー数の減少として顕著に表れる。

値上げが行われた2022年5月以降プレイヤー数は減少を続け1.6万プレイヤーまで減少する。 ユーザー数も減ってはいるがAltの数を整理したユーザーが多いという見方が多い。 EVE文明の勃興から最盛期を迎えた3.2万プレイヤーから1.6万プレイヤーである。 フォーラムでは人口が半分に減った国家に未来はないと書き込みがあったが、それは事実だろう。 EVE Onlineはゆっくりと滅びていっているのである(本記事の趣旨とことなるのでこれ以上は言及しない)。

ユーザーロックイン

CCPは営利組織である。 サービスを提供しその見返りに金銭を受け取る。 色々な指標があるがここでは「売上高」だけ見ていきたい。 売上高とは直球で我々がCCPに支払ったお金の総額である。  事業計画を立てるときに売上高は利益率と共に非常に重要なものである。 この売上高は投資家から見て事業が上手く行っているかどうか一四半期毎に投資情報として開示される。

プレイヤー数の減少を見越してのリスクマネージメントか、3月末からΩ+MCTの半額セールを行いだした。 MCTは原価率0%、利益率100%に近い幾らでも値引き出来る商品※3だしそもそもΩより高いと評価の低い商品だった。 それを半ばタダ同然のごとくバンドルし最長24ヵ月のパックを購入すれば値上げ前と同じ価格と同等で購入出来る商品を期末セールとして開始した。 それは

  1. 期末に当期の売り上げを上乗せ
  2. 長期サブスクリプションで継続的に売り上げを安定させて将来の利益を確実にし事業計画を立てやすくする※4
  3. 同時にユーザーをロックイン※5させたい思惑も透けて見えるセールだった。
     同じブランドやシステムを長く使えば使うほどそのユーザーは他のシステムやブランドには移行しにくくなる。 忠誠心の高いEVEユーザをさらに囲い込む作戦だ。

この一四半期の最後の週にΩ+MCTを半額で販売するのは値上げ後の定番セールとなった。

伸び悩む売り上げ

しかし9月-10月に異変が起こる。これまで見たことのないセールが立て続けに起こる。

  1. 10% PLEXセール
  2. 11日間Ω+MCT 50%オフセール (通常一週間)
  3. 15% PLEXセール+最大45% off 24ヵ月Ωセールの開始(現在進行中) New Eden Store (ゲーム内ストア)

1と2は9月末である。 そして3は10月あたま。 10% PLEXセールとΩ+MCTのセールをやっても、第四四半期の売り上げが立たない、そんな見通しだったと想定する。 そうでも考えないと一四半期頭の10月にセールを行う理由がないからである。

そう考えざる終えないのがPLEX 15%セールとNew Eden StoreでのΩセールである。 幾らPLEXを売り上げてもゲーム内貨幣はサービスもしくはゲーム内アイテムに換金されない限り売り上げとして計上できないからである※6。そこで今期・来期の売上高を上げるためにCCPは10% / 15% で販売したPLEXをΩに交換する手法に出た。 たとえPLEXを購入してΩの購入を考えていなくてもISKでΩ購入を考えているユーザが増えるとΩの値段が上がるためPLEXを販売して換金、売り上げとして計上されることになる。

長引くセール期間とPLEX乱売

2021年にはなかったハロウィーンの13%オフ PLEXセール。 Black Fridayは、例年より一週間も早く始まるなど明らかに苦しい台所事情が分かる。 売り上げを上げるためにすぐに出来ることはプライスアクションしかないからだ。 新規ユーザーを取り込むための施策やコンテンツの拡充には長い時間が掛かる。 どうしても直近の売り上げを上げるためにはセールを行うしかない。 しかしEVE Onlineには売る物が限られている。 大多数のユーザーが課金して購入したいと思う物は、PLEXとΩぐらいしかないだろう。

これからも続くPLEX乱売とΩ+MCT50%オフ

実社会の経済を見ればインフレ、戦争、テックセグメントのレイオフなど景気は悪くなれど上向きにはならない。 COVIDの巣ごもりも終わり家に籠もる必要もなく、CCP自らが犯したΩ値上げもあり新規ユーザーが右肩上がりに増えていく要素は全くない。 CCPが現在出来ることは、これまでのユーザーを引き留めるべくセールという手法でΩ価格を値上げ前の水準で提供しながら、中・長期のコンテンツ拡充を行っていくしか道はないのである※7。 

注釈

※1 https://www.youtube.com/@OZeve

※2 An Open and Honest Letter to CCP from an Alliance Leader
https://forums.eveonline.com/t/an-open-and-honest-letter-to-ccp-from-an-alliance-leader/379870

※3 本来100%利益率という物は存在せず、コストと売り上げの間(マージン)には人件費やサーバーの運用費など含まれるが、ここではわかりやすく100%とする。

※4 サブスクリプション
商品やサービスを販売したときに売り上げとなるのですが、サブスクリプションサービスであるΩは、そのサービスが提供されたときに売り上げとなります。
例えば、12ヵ月のΩを購入した場合、まずは前受金として処理をして一旦負債として処理をします。
”…会計処理上は支払いを受けた1年分の金額のうち、サービス提供の経過分を売上高に計上し未経過分は前受金として処理します。その後、経過月ごとに前受金を月次で売上高に振替処理を行うという流れが一般的です。

サブスクで重要性が高まる請求から入金に至る債権管理とは?

CCPも同様の会計処理をしています。 

Pearl Abyss Iceland ehf. Consolidated Financial Statements 2021
“3.7.1 Premium access fees
The Group recognizes revenue from premium access fees on a straight-line basis over the subscription period. Fees for the selected subscription period (1, 3, 6 or 12 months) are collected at the beginning of the period. Unrecognized revenues from subscription fees are accounted for as deferred revenues in current liabilities.”

上記文書はIcelandのTax filingで公文書ですがインターネット上には公開されておらず有償での入手になります。 OZ_Eveで公開された部分を記載しております。

※5 ベンダーロックイン https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%B3

※6 PLEX
PLEXもサブスクリプションと同様、ゲーム内でΩ購入もしくはISK変換などに使用されて始めて売り上げとなり、それまでは負債扱いになります。 

”顧客が「決済プラットフォーム」で代金を支払った時点でまもなくコンテンツ提供者への入金は発生するもののこの時点では役務提供の終了(=売上発生)とは見做さず、 前受金処理(負債として計上すること)を行う 、ということになります。つまり顧客が実際に前払式支払手段を利用してアイテムを引き替えた時が前受金を取り崩すタイミング=すなわち売上として計上を行うタイミングになるわけです。”

SEのための前払式支払手段の会計処理 | Technology | KLablog | KLab株式会社

Pearl Abyss Iceland ehf. Consolidated Financial Statements 2021
“3.7.2 In-game currency
Revenue from the sale of in-game currency is recognized when the Group has fulfilled it’s performance obligations and service has been fully satisfied. Revenue received from the sale of unused in-game currency is reported as deferred revenues in current liabilities.”

※7 休眠中のプレイヤーへの大容量スキルポイントのセールなどウェブに出てこないプロモーションも行われている。

以上