
先日CrodaのEVE交易に関する記事を書きましたが、彼が出資しているOz tankにてCCPの2024年度財務報告を解説する動画にゲスト参加していたので、興味から動画の内容を記事にしてみました。
ちなみにCCP GamesはPerl Abyssの財務諸表上の名称はPearl Abyss Icelandというらしいです。
主要な財務指標
収益増加とそれでも続く損失
2024年度の重要な財務指標の概要:
- ゲーム収益: 前年比8%増の6,000万ドル(2023年は5,600万ドル)
- 純損失: 1,950万ドル(2023年は1,880万ドル)
- 現金残高: 1,300万ドル(2023年末の3,200万ドルから大幅減少)
- PLEXリザーブ: 前年比10%増加
収益は増加していますが、依然として約1,950万ドルの損失を計上しています。この状況について、取締役会は「EVE Frontier、EVE Vanguard、およびCarbon Open-sourceプラットフォームといった複数の開発プロジェクトへの意図的な投資増加」が主な要因であると説明しています。これらのプロジェクトは2025年以降に重要なリリースフェーズに入る予定です。
地域別収益の動向
収益の地域別内訳を見ると:
- 北米(主に米国): 全体の約50%を占め、安定的に推移
- ヨーロッパ: 割合が徐々に減少傾向
- アジア: 徐々にシェアを拡大中
この地域分布は為替変動リスクをもたらします。特に米ドルが下落傾向にある現在、北米からの収益が約50%を占めるCCPにとって、10%の米ドル下落は収益の約5%減少に直結します。
政府からの助成金
実はCCPは約600万ドルの政府助成金を受けています。これはアイスランドやイギリスなどからの補助金で、収益の約10%に相当する重要な資金源となっています。
EVE OnlineとPLEXの状況
オメガサブスクリプションとPLEX
繰越収益からわかるPLEXとサブスクリプションの状況:
- サブスクリプション(オメガ): 前年とほぼ同水準の350万ドルの未使用サブスクリプション
- PLEX: 未使用PLEXの残高が前年比10%増加
繰越収益とは、ユーザーから受け取ったもののまだサービスとして提供されてないため、収益とせず負債として記載するお金のことで、EVEの場合、まだ消化されてないオメガ時間と未使用PLEXになります。ここで注目すべきはPLEXの状況で、CCPは昨年、New Eden Storeでの大規模なセールを通じてPLEX在庫を減らそうとしていましたが、2024年末の未使用PLEX残高は2023年末より10%も増加しています。これはプレイヤーが依然として多くのPLEXを購入していることを示し、CCPの収益増加の一因となっています。

プレイヤー数の推測
収益増加(8%)とPLEX残高増加(10%)から、課金プレイヤーアカウント数も約13%増加している可能性があります。ただし、これは純粋な推測であり、PLEX販売が総収益に占める割合が増えただけという可能性もあります。
Pearl AbyssとCCPの関係
累積損失
Pearl AbyssがCCPを買収した2018年以降、CCPは最初の1年を除いて毎年損失を計上しており、累積損失は約5,600万ドルに達しています。Pearl Abyssは約2億2,600万ドルでCCPを買収し、その後も損失を補填し続けています。
A16Zの投資
ベンチャーキャピタルのA16Z(Andreessen Horowitz)は、ブロックチェーンベースのサバイバルMMOであるEVE Frontierの開発のために4,000万ドルを投資しました。この投資は「トークンワラント」という形で行われており、おそらくEVE Frontierで使用される暗号通貨トークンを将来優待価格で購入する権利となっています。
財務報告によると、このトークンワラントの総額は3,750万ドル(前年の2,750万ドルと前々年の1,000万ドル)となっており、A16Zの投資額4,000万ドルにほぼ一致します。これはA16Zが投資した資金がほぼ使い切られたことを示唆しており、今後の追加投資が必要になる可能性があります。
将来の展望と懸念点
EVE OnlineとCCPの将来
現在のCCPの状況から考えられる将来シナリオ:
- EVE Frontierとの賭け: CCPとPearl Abyssは、EVE FrontierとEVE Vanguardの成功に大きく依存しています。特にEVE Frontierは大きな賭けであり、2025年は「成功か失敗か」の分かれ目の年になるでしょう。
- EVE Onlineの収益性: EVE Online自体は収益性が高いと推測されます。6,000万ドルの収益と2,000万ドルの損失を考えると、新規開発プロジェクトにR&D費用の約2,000万ドルが使われていると仮定すれば、EVE Online単体では利益を生み出している可能性があります。
- 人員増加: 従業員数は2019年の279人から2024年には402人へと増加しています。これは新規プロジェクト開発のための増員と考えられますが、EVE Onlineだけを運営するなら、より少ない人員で可能かもしれません。
現金の懸念
年末の現金残高は1,300万ドルまで減少し、年間損失額(約2,000万ドル)を下回っています。これは、CCPが追加の資金調達(Pearl Abyssからの資金注入、A16Zからの追加投資、または融資)を必要とすることを示唆しています。
まとめ
CCPの財務状況は複雑ですが、いくつかの重要なポイントが浮かび上がります:
- EVE Onlineは20年経った今でも5,500万ドルの収益を生み出す稀有なゲームです。プレイヤーベースは非常に忠実で、収益は増加傾向にあります。
- CCPの損失は主に新規プロジェクト(EVE Frontier、EVE Vanguard、Carbon Engine)への投資によるものと思われます。
- 2025年はCCPにとって重要な年になり、新規プロジェクトの成否がPearl Abyssとの関係や会社の将来を左右する可能性があります。
- EVE Online自体は収益性が高いと推測され、プレイヤー数も増加傾向にあるため、ゲーム自体の存続に直接的な懸念はないと考えられます。
財務報告からは、CCPがEVE Onlineの安定した収益を基盤としながら、大きな賭けとも言える新規プロジェクトに投資している姿が見えてきます。現在の損失にもかかわらず、Pearl AbyssはCCPに対する長期的な視点を持っているようです。2025年以降、EVE FrontierとEVE Vanguardが成功するかどうかが、CCPの財務状況を大きく左右することになるでしょう。
※この記事は2025年5月に公開されたCCP Games(Pearl Abyss Iceland)の2024年度財務報告に基づき、Oz Tankで解説された内容を元に作成しています。
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