
2025年2月、ロシア系アライアンス「HOLD MY PROBS(PROB)」がWintercoから事実上の追放処分を受けた問題について、同アライアンスのCEO KolyaTort氏がRedditに詳細な経緯を投稿し、議論を呼んでいる。この事例は、多様なメンバーが在籍するコアリション内の複雑な政治を浮き彫りにした。
事件の経緯
加入から追放まで
HOLD MY PROBSは2025年11月初旬、PanFam崩壊後にWinterco(FRT)に加入した。Branch地域の13システムという小規模なエリアを割り当てられ、約3ヶ月間活動を続けていた。
アライアンスの活動内容:
- CTA(Coalition Task Action)への参加
- 防衛作戦への従事
- Dropperへの対応
- コアリション内政への不干渉
- ZKillboardアクティビティ:500-600パイロット規模
KolyaTort氏は以下の行為を行っていないと強調している:
- 他のロシア語圏アライアンスからのパイロット勧誘
- 利己的な外交的要求
- アライアンス名義での声明発表
- 独自の情報戦の実施
- コアリション政治への介入
発生した問題と対応
リクルート方針の懸念
加入当初からリクルート方針について疑問が提起されたが、これは解決済みとされた。
スパイ事件
最も深刻な問題として、アライアンス内のスパイがフレイターを撃墜し、約80B ISKの損害を発生させた。
HOLD MY PROBSの対応:
- 問題を即座に認識
- 損害を全額補償
- 再発防止策の実施
この対応後、公式な制裁、警告、クレームは一切なかったとKolyaTort氏は主張している。
追放の理由:「ドラマ」という曖昧な概念
突然のドラマ
KolyaTort氏によれば、ロシア語圏のチャンネルで「HOLD MY PROBSがFRTから追放される」という情報が流れ始めたという。しかし当人は、Noraus(FRTリーダー)から「いくつか問題がある」という短いメッセージを受け取っただけで、具体的な対話の機会は与えられなかった。
「ドラマ」の発生源
- 地域に長く住むロシア語圏リーダーの周辺
- EVEに関する雑談や考察を投稿するロシア語情報チャンネル
問題は、このチャンネルがKolyaTort氏のものと誤認されていたことだ。実際には:
- アライアンス公式の発信ではない
- アライアンスと調整していない
- アライアンスの立場を代表していない
- むしろHOLD MY PROBSに否定的な内容も多い
それでも、これらのコンテンツがアライアンスの活動の一部と認識されてしまった。
対話の不在
KolyaTort氏が最も問題視しているのは、対話の機会が与えられなかった点だ:
- 公式な警告なし
- 明確なクレームリストなし
- 具体的な指摘なし
- 反論の機会なし
決定は「対話を通じて」ではなく、「対話の周辺で」行われた。
Norausの最終判断
Noraus氏はプライベートな通信で以下を認めている:
- 伝えられた情報のすべてが真実ではなかった
- 公式なルール違反はなかった
- これは懲罰ではない
そして最終的な理由は: 「コアリションはこのレベルのドラマに対処できない。懲罰ではないが、移転をお願いしたい」
つまり、「あなたは罰せられているのではなく、存在がやっかいなので去ってほしいだけだ」という論理である。
ステレオタイプの影響
別の通信では、さらに本質的な問題が明らかになった:
- ロシア文化に関する一般化
- 「ロシア語圏コミュニティはドラマを好む」という決めつけ
- KolyaTort氏が「主導者」「資金提供者」「影響力の中心」であるという推測
これらは行動に基づかず、事実に基づかず、認識とステレオタイプに基づいている。
コミュニティの反応
Redditのコメント欄では賛否両論の議論が展開された。
同情的な意見
「単一のスパイ事件で永久に除外するのは狂気的だ。適切に処理され補償されたのに。本当に献身的なスパイは、クリーンなアカウントで参加し、実際にプレイ/チャットして時を待つ。CCPは彼らの家にカメラを設置させてくれない」
「発言の機会すら与えられなかったのは悲しい」
「個人的には、ProbsはWintercoの中でも自立したグループの一つだと感じていた」
批判的な意見
「あなたのパイロットが他のアライアンスの領域で探査やPVEを行っていたという苦情が繰り返しあった。複数の再犯者がおり、直接警告されても活動を続けたケースもあった」
「Pandemic hordeにいたコープとして、Hold my probsの対応は本当に悲惨だった。リーダーシップは反応せず、何も強制せず、誰でも勧誘していた。個人的に遭遇した中で最も機能不全のアライアンスの一つだ」
「Wintercoから追放されるには想像を絶するほどの「やらかし」が必要だ。あなたは正直ではない」
Battle Report (Vale/Tribute/PB/Gem)の戦闘記録を調べると、ProbsのパイロットはWCフリートにあまり積極的に参加していなかったという指摘もあった。これも少なからず原因の一つになったと言えそうだ。
ブリゲーディングの指摘
このスレッドでは、HOLD MY PROBSが組織的なアップボート操作(ブリゲーディング1)を行っているとの指摘もあった。
「アライアンスのアナウンスチャンネルで「Redditに投稿した。アップボートしてね 🙂 🙂 :)」というpingが確認されている」
ただし、Redditのアンチブリゲーディングコードにより、リンク経由の即座のアップボートは無効化される仕組みになっている。
80B ISK補償の評価
「知らずに勧誘したスパイがブルーを殺したために80Bを全額返済しているなら、評価は良くなるべきだ。そもそもどうやってスパイに80Bのフレイターを落とさせるんだ…」
「JFパイロットもバカだった。フリートを公開設定にして、自由移動を許可していた。スパイが参加して指揮権を取り、JFをKSからワープアウトさせた」
これに対し、最近SBSQのスパイがFRTのスーパーキャリアをタックルしようとして失敗した事例も挙げられ、スパイ問題はどのアライアンスにも存在することが示唆された。
EVE Onlineのロシア系勢力の複雑な関係
この事件を理解するには、EVE Onlineにおけるロシア語圏コミュニティの特殊性を知る必要がある。
主要なロシア系勢力
Siberian Squad (SBSQ)
- Winterco内の主要ロシア系アライアンス
- 長期間にわたりFRTと協力関係
- 安定した地位を確立
HOLD MY PROBS
- 元PanFam所属
- PanFam崩壊後にWintercoに参加
- 新参者としての立場
ロシア語圏特有のドラマ文化
ロシア語圏のEVEコミュニティには、独特の情報チャンネル文化とドラマ生成メカニズムが存在する。KolyaTort氏が言及した「ロシア語情報チャンネル」は、EVEに関する考察、冗談、噂を投稿するプラットフォームで、公式チャンネルではないが影響力を持つ。
コメント欄でも指摘されているように: 「ロシア語圏コミュニティがドラマを好むって? どのコミュニティもドラマが好きだよ」
既存勢力と新参者の緊張
既にWinterco内で地位を確立しているロシア系アライアンス(SBSQ)と、新たに参加したHOLD MY PROBSの間には、潜在的な緊張関係があった可能性がある。
同じコアリションでなくても、FRTの敵対勢力や他のロシア人勢力による分断工作など、明示されない政治的要因が背景にあったと考えられる。
パワーブロック内部政治の本質
この事例が示すのは、EVE Onlineの大規模コアリションにおける評判と認識の政治である。
「ドラマ」という便利な理由
「ドラマ」は測定不可能で、反論不可能で、解釈の余地が広い概念だ。公式なルール違反を証明する必要がなく、「雰囲気」や「印象」で判断できる。
これにより:
- 具体的な証拠なしに排除できる
- 反論の機会を与えずに決定できる
- 丁寧な言葉遣いで正当性を装える
ステレオタイプの危険性
「ロシア人はドラマを起こす」というステレオタイプは:
- 個別の行動を無視する
- グループ全体を一般化する
- 先入観に基づく判断を正当化する
KolyaTort氏が指摘するように、これは「行動に基づかず、事実に基づかず、認識とステレオタイプに基づいている」。
評判の物語化
一度「問題のあるアライアンス」という物語が形成されると、それは自己強化的に機能する:
- 噂が広がる
- 人々がその前提で行動する
- 中立的な行動も疑いの目で見られる
- さらに噂が強化される
KolyaTort氏の懸念はまさにここにある:「パワーブロックは、現実と直接関係のない評判の物語を簡単に作り出し、それを客観的事実として固定できる」
事件の真相は何か
- HOLD MY PROBSは重大な大規模違反は犯していない
- しかし、多数の小規模な問題が蓄積していた
- 他のロシア人からNorausに対し色々な誹謗中傷やデマが寄せられた
- ロシア人プレイヤーのステレオタイプと既存の緊張が判断に影響した
- 最終的に「関わると面倒」という包括的な理由で排除された
この事例が示す教訓
アライアンスリーダーにとって
- 評判管理の重要性: 公式なルール遵守だけでは不十分
- 積極的なコミュニケーション: 問題を事前に察知し対話する
- 内部統制: メンバーの行動を効果的に管理する
- 文化的配慮: ステレオタイプを認識し対処する
パワーブロックにとって
- 透明性のある手続き: 明確な基準と警告システム
- 対話の機会: 一方的な決定を避ける
- 証拠に基づく判断: 噂や印象ではなく事実を重視
- ステレオタイプの排除: 文化や国籍に基づく偏見を避ける
EVEコミュニティにとって
この事例は、EVE Onlineの政治が単なるゲーム内システムではなく、人間関係、文化的認識、権力構造の複雑な相互作用であることを示している。
コメント欄では「Dronelandsに移動するのか?」「Goonsを撃ちたいか?」といった質問も出ており、HOLD MY PROBSの次の動きに注目が集まっている。
- ブリゲーディング(Brigading)とは、インターネット上のコミュニティ(Reddit、SNS、掲示板など)において、外部の集団が意図的に特定の投稿やスレッド、ユーザーに対して、組織的に荒らし行為や不当な評価(投票操作)を行う行為 ↩︎
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