
現状の課題:Wardecとストラクチャ保有のジレンマ
EVE Onlineにおいて、2019年のWardec改革は画期的な変化をもたらしました。ストラクチャを所有するコーポレーションのみがWar dec対象となり、宣戦布告の対象となるというシステムへの移行により、純粋な社交目的のコーポレーションは初めてWar decの恐怖なしにプレイできるようになりました。
しかし、この変更は初心者支援コーポレーションに深刻なジレンマを突きつけています。POCO(Planetary Customs Office)やCitadelを所有すれば税収を得られますが、同時にWardecの標的となります。2018年のEVE VegasのCCPの統計によれば、わずか5つのコーポレーションが全Wardecの50%を担っており、Wardecの96%では防衛側がキルを得られていない1という現実があります。初心者が多数在籍するコーポレーションがこのような非対称な戦争にさらされることは、メンバーの離脱とコーポレーション崩壊に直結します。

ストラクチャなしでの資金調達方法
1. コーポレーション税の限界
プレイヤーコーポレーションはメンバーに対してコーポレーション税を設定でき、これはバウンティ、Project Discovery、AIR Daily Goals、ミッション報酬などの支払いから自動的に徴収される仕組み2です。NPCコーポレーションの11%税率を下回る設定にすれば、加入メリットを提示できます。
しかし、ここに根本的な問題があります。熟練プレイヤーの多くは「金策用ALTキャラクター」を自身の作成した税率0コーポレーション(いわゆる脱税コーポ)に所属させ、メインキャラクターだけをコミュニティコーポに置くという運用が一般化しています。結果として、初心者支援コーポの税収は、まさに「支援対象である稼ぎの少ない初心者」からのみ徴収されるという皮肉な状況が生まれています。
2. コーポレーションプロジェクトの活用
コーポレーションプロジェクトは、コーポレーションのCEOおよびディレクターが最大100個のアクティブプロジェクトを作成でき、メンバーがリーダーシップが設定したタスクを完了することで報酬を得られるシステム3です。
Revenant拡張ではShip Insuranceプロジェクトタイプが追加され、コーポレーションはサードパーティツールに頼らずに艦船補償プロセスを自動化できるようになった4ほか、プロジェクトの締め切り設定や参加制限機能も実装されました。
ただし、これは資金を「集める」仕組みではなく、既存の資金を「分配する」仕組みです。プロジェクト報酬の原資は結局コーポレーションウォレットから支払われるため、根本的な収入源の問題は解決しません。
3. 寄付とパトロンモデル
現実的に多くの初心者支援コーポレーションは、ベテランメンバーや運営陣からの寄付、あるいはアライアンス・連合からの補助金に依存しています。EVE Universityのような大規模組織は、長年の蓄積と外部からの支援によって運営されていますが、新設の初心者支援コーポがこのモデルを再現することは極めて困難です。
4. 外部活動による間接収入
ストラクチャを保有せずに収入を得る方法として、以下のような間接的アプローチがあります:
- ホールディングコーポ方式:別法人でストラクチャを保有し、本体はWar decを回避
- アライアンス加盟:上位組織からのインフラ提供と補助金
- コミュニティイベント収益:配信、コンテスト、教育コンテンツ等
しかし、これらのアプローチも問題があります。
- 配分の公平性(上級者のPvPコンテンツのSRP(艦船補填)が重要視され、幅広い初心者向けのコンテンツに回らない)
- コミュニティの独立性(上位組織に生命線を握られることにより自主性が失われる)
- 運営陣の負担(ゲーム以外の作業が増え、リーダー陣のモチベーションが損なわれる)
システムの問題点
ALTコーポによる税回避の常態化
ハイセクでの金策において、ALTキャラクターを0%税率のソロコーポに所属させることは「当たり前」の最適化として定着しています。これは合理的なプレイヤー行動ですが、コミュニティコーポの財政基盤を根本から揺るがします。
メインキャラクターをコミュニティに置きながら経済活動はALTで行うという分離は、以下の悪循環を生みます:
- コーポの税収が初心者の少額収入のみに限定される
- サービス提供のための資金が不足する
- サービスが劣化し、メンバーの定着率が下がる
- コーポの魅力が低下し、新規加入が減少する
収入源とリスクの不可分性
ハイセクにおける主要な受動的収入源(POCO税、Citadel利用料など)は全てストラクチャ保有を前提としており、これはWardecを受け、ハイセクで艦船を失うリスクを持つことと直結しています。「安全だが収入なし」か「収入ありだが危険」の二択しかないシステム設計は、初心者向けコミュニティの形成を阻害しています。
改善提案
1. アライアンス税の導入
現在のEVEにはアライアンスレベルでの税システムが存在しません。CCPは「コーポレーションプロジェクトを非メンバーに拡張し、アライアンス内外の外部コーポレーションへの業務委託を可能にする」計画を発表しているものの、直接的な税制度の言及はありません。
2. 「コミュニティコーポ」認定制度
一定の条件(初心者比率、教育活動実績など)を満たすコーポレーションを「コミュニティコーポ」として認定し、限定的なストラクチャ保有(小規模POCOなど)をWar dec対象外とする制度が考えられます。これはゲームの社会的側面を強化するCCPの方針とも整合します。
3. 寄付システムの公式化
現在、ISKの寄付は単純な送金として処理されますが、これを公式の寄付システムとして整備し、寄付者へのインセンティブ(SKINロック解除、称号など)を付与することで、パトロンモデルを支援できます。
4. コーポレーションプロジェクトの収入機能拡張
現在のプロジェクトは「支出」機能ですが、これを「収入」にも使えるよう拡張できます。例えば「コーポレーションへの寄付プロジェクト」を作成し、寄付者にLPや称号を付与するなど、クラウドファンディング的な仕組みの導入が考えられます。
5. ALT問題への対応
根本的にはゲームデザインの問題ですが、以下のような対応が考えられます:
- キャラクター単位ではなくアカウント単位での税率適用(技術的に困難だが理想的)
- 所属コーポでの活動量に応じた税率軽減(アクティブメンバーへの優遇)
- プライマリキャラクター設定による税率優遇
結論
ストラクチャを保有せずに初心者支援コーポレーションを運営することは可能ですが、持続可能な資金調達は依然として困難です。現行システムはベテランプレイヤーに有利な構造となっており、新規プレイヤーのコミュニティ形成という観点からは改善の余地があります。
CCPは近年、「コーポレーションプロジェクトを非メンバー向けのフリーランスタスクとして拡張し、リクルートの重要な手段とする」など、組織運営の改善に取り組んでいます。しかし、初心者支援の基盤に関する直接的なサポートは依然として限定的です。
EVE Onlineの長期的な健全性のためには、新規プレイヤーを受け入れるコミュニティの持続可能性が不可欠です。Wardecシステムとストラクチャ保有の関係性を再検討し、コミュニティ志向のコーポレーションに対する支援メカニズムを構築することが、今後の重要な課題となるでしょう。
- 2018年の情報:https://massivelyop.com/2018/10/20/eve-vegas-2018-eve-online-is-finally-getting-a-fair-wardec-system/ ↩︎
- https://wiki.eveuniversity.org/Tax ↩︎
- https://support.eveonline.com/hc/en-us/articles/9583433729308-Corporation-Projects ↩︎
- https://www.mmorpg.com/news/eve-online-breaks-down-revenants-corporation-project-expansion-ship-replacement-automation-more-2000133183 ↩︎
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