EVE Fanfest 2026のメインキーノートが開催された。CCP GamesからFenris Creationsへと社名を変更して初めてのFanFestであり、EVE Online、EVE Vanguard、EVE Frontierの3タイトルを軸に「EVE Universe」の今後が語られた。本記事ではキーノート全体の内容を整理してお届けする。


Fenris Creations ── 新たな船出

冒頭に登壇したのはFC Orca(旧CCP Orca)。FanFest通算18回目にして、Fenris Creations名義では初の開催であることが強調された。Pearl Abyssとの約7年半のパートナーシップに感謝しつつ、独立した新体制としての再出発が宣言されている。

なお「Fenris」の名は、同社の最初のプロダクトに使われていたロゴに由来しており、CCP以前のルーツに立ち返る意味がある。Hilmar(FC Helmar)によれば、アイスランドの古文書「エッダ」に描かれるフェンリス狼と、毎年6月に太陽がフェンリスの口から逃れて新たな周期が始まるという北欧神話の天文学的解釈にも結びついているとのことだ。


EVE Online 新拡張「Cradle of War」── 2026年6月9日リリース

キーノート最大の発表がEVE Onlineの次期拡張パック「Cradle of War(クレイドル・オブ・ウォー)」だ。FC Okami(旧CCP Okami)が登壇し、「Elevation(引き上げ)」と「Progressive Complexity(段階的な複雑さ)」という2つの開発理念を提示した。

新スターター空間「Exordium」

新規プレイヤー向けの安全な領域「Exordium(エクソーディアム)」が導入される。EVE史上初の「本当に安全な空間」であり、新規カプセラが宇宙の危険と複雑さを段階的に学べるよう設計されている。シップキャスター(ジャンプゲートの一種)を通じてファクションウォーフェア(FW)など危険な領域への直接ルートも用意されており、ベテランプレイヤーが新規を勧誘する導線としても機能する。

ミリタリーキャンペーン

4大帝国(アマー、カルダリ、ガレンテ、ミンマター)が中心に戻る。ドリフターやDeathlessに焦点を当てていた物語から、帝国間の対立に回帰するとのこと。

ミリタリーキャンペーン」は新しいコンテンツフレームワークで、プレイヤーが帝国のフリーランスとして目標達成に貢献し、その結果がNew Edenの世界に永続的な変化をもたらす仕組みだ。例としてアマー帝国の経済強化による課税体系の変動や、ガレンテのドローン新技術開発などが挙げられた。

キャンペーンの進行はフリーランスジョブのフレームワーク上に構築されており、マイニング、探索、戦闘、インダストリーなど多様な活動が目標達成に寄与する。複数の帝国のキャンペーンに同時参加することも可能。

シアター・オブ・ウォー(Theaters of War)

New Eden全体の紛争状況を俯瞰し、自分の役割と影響を把握できる新UIが導入される。ハイセクのプレイヤーを帝国間戦争やFWへ誘導するガイド機能としても機能する。

アチーブメント&タイトル

EVE Onlineにアチーブメントシステムとタイトルが実装される。タイトルはキャラクターシートから選択でき、ステーションハンガー、契約、チャット、キャラ情報など各所に表示される。新規プレイヤーにとっては馴染みやすく、ベテランにとっては新たな目標となる。

新艦船

  • ファクションネイビー・デストロイヤー ── 各帝国に新シリーズ追加
  • Tech 2 コマンドキャリアー ── 各帝国にT2空母が登場。高機動性とコマンドバースト特化の究極のサポート艦と位置づけられている。詳細スペックは翌日のディープダイブセッションで公開予定

FW改善 & スタンディング問題

FWの長年の課題(AWOXing、スタンディング低下問題など)に対するバランス調整が進行中。キャンペーン参加でスタンディングを大幅に回復できる仕組みも導入される。

大規模変更予告:フォースプロジェクション&アノマリー(2026年9月)

Cradle of War時代の「メジャーアップデート」として、2026年9月にフォースプロジェクション(戦力投射)とアノマリー(アノプレックス)に大幅な変更が入る。

  • ジャンプファティーグは廃止せず維持
  • 大規模勢力の長距離戦力投射能力を大幅に削減
  • 領有者が自領域内で利便性を保てる仕組みは維持
  • 大規模アライアンスの影響力を減らし、新興コーポレーションがヌルセクに定着しやすくする狙い
  • 現CSMおよび過去のCSMの教訓を踏まえたコンセンサス形成を目指す

「Theaters of War」は複数拡張アーク

Cradle of Warは最低3つの拡張にまたがる「Theaters of War」アークの第1章と位置づけられている。宇宙と惑星をまたいでプレイヤーをつなぎ、新規導入、パワー獲得の新機会、そしてVanguardとの連携を実現していく構想だ。


EVE Vanguard ── プレアルファ終了、7月にアルファテスト「Operation Avalon」

FC Collins(ゲームディレクター)が登壇し、EVE Vanguardの大きな進展を発表した。

プレアルファからアルファへ

昨年9月のプレアルファテスト「Operation Nemesis」のフィードバックを受け、開発チームは「もっと洗練されたシューター体験を」という要望に応えた。武器の見た目・挙動、敵AI、マップすべてが大幅にブラッシュアップされている。

Operation Avalon(2026年7月7日~20日)

  • EVE Vanguard初のアルファテスト
  • EVEランチャーからの無料アクセスに加え、初めてSteamからも無料で参加可能
  • 新マップ「Lost Convoy」 ── Upwell施設を舞台にしたレイドベースのゲームプレイ
  • 新武器:ミンマターSMG、アマーレーザーライフル、ミンマター・シュラプネルキャノンなど
  • 抽出(Extraction)メカニクス ── ハーモニックブリッジを起動して宇宙に転送されるが、ウォークローンの肉体は焼失する。抽出ポイントは時間経過で軌道爆撃により破壊されていく
  • Mordu’s Legionの敵AIが大幅強化 ── 増援呼び出し、軌道降下、ヘビーオプレッサーなど

EVE OnlineとVanguardの経済的接続

Operation Avalonで初めて、Vanguardプレイヤーの活動がNew Edenに永続的な地理的・経済的影響(ローミングバスティオン、ウォーバージ)をもたらすようになる。将来的にはフリーランス契約を通じた両ゲーム間の協力 ── 真の傭兵ファンタジー ── を目指す。


EVE Frontier ── ハードコア宇宙サバイバル&オープンモッディング

FC Maximum Cats(旧CCP名不明)が登壇し、EVE Frontierのビジョンを語った。

ゲームの方向性

  • ハードコアなスペースサバイバル体験
  • マッシブ・マルチプレイヤー、シングルシャード、MOD対応
  • WASD/ゲームパッド/HOTASによるダイレクトフライトコントロール
  • NPC市場なし、法律なし、セキュリティなし ── 純粋なサバイバル
  • シグネチャ管理、アクティブスキャン検知、ライン・オブ・サイトなどリアルなセンサーシステム
  • 現在のライブビルドで25,000星系、実験段階では100万星系規模のテストも

スマートアセンブリ & ハイパーモジュラリティ

プレイヤーが設置する構造物「スマートアセンブリ」はプログラム可能で、市場、セキュリティシステム、物流システム、新しいゲームプレイモードなどをプレイヤー自身が構築できる。開発側が市場を作るのではなく、プレイヤーが複数の市場を作る形だ。

今後「ハイパーモジュラリティ」── 個別のモジュールブロックから船や設置物を組み立てるシステム ── が導入予定。

Suiブロックチェーン移行 & ハッカソン

Mistlabs/Suiネットワークへの移行が進行中。昨年8月のハッカソンでは800人が参加し、128プロジェクトが提出された。開発者の許可なくシングルシャード環境にMODを追加できるオープンモッディングプラットフォームとしての実績が示された。

Cycle 6が2026年6月25日スタート予定。


DeepMind との研究パートナーシップ

キーノートのサプライズの一つが、Google DeepMindのCEO Demis Hassabis 本人のビデオメッセージだった。

DeepMindとFenris Creationsの研究パートナーシップが正式に発表された。Hassabisは自身のゲーム開発者としてのキャリア(Theme Park、Black & White、Republic)やDeepMindのゲームAI研究(Atari、囲碁、StarCraft)に触れ、EVEの複雑性と動的な経済がAI研究の理想的な場であると述べた。

Hilmarはチェスにおけるディープブルー、囲碁におけるAlphaGoの例を引き合いに出し、AIがこれらのゲームを終わらせるどころかむしろ人気を高めたことを指摘。EVEにおいても同様に、AIが新たなレイヤーを解き明かすことへの期待を語った。

なお、すでにDeepMindのGeminiを活用した「Ora Dance」機能が実装されており、新規プレイヤーの学習支援に貢献しているとのこと。


コミュニティ関連の発表

アライアンストーナメント22

AT22の開催が確定。ルール詳細は近日公開。今年のスポンサー帝国はアマー帝国で、新たなプライズシップと報酬が用意される。

EVE Creator Awards

FanFestの新たな年間行事として「EVE Creator Awards」が創設された。8カテゴリーで2,000人以上のクリエイターがノミネートされ、影響力・創造性・品質・技術力を基準に審査。生涯貢献を讃える「Polaris Award」も設けられている。

Project Discovery 10周年

プロジェクト・ディスカバリーが10周年を迎えた。これまでに10億件以上の科学的分類が提出され、累計で約500年分の注意力が投入された。生物学、天体物理学、がん研究に貢献してきた実績が改めて紹介された。

PLEX for GOOD リニューアル

災害時限定だった「PLEX for GOOD」が常時寄付可能な体制に進化。パートナーとして「Player versus Cancer」とアイスランド捜索救助隊が発表され、新ウェブサイト開設から10日間で30万PLEX以上が寄付された。

Andrew Groen新著「Archive」

「Empires of Eve」の著者Andrew Groenが新刊「Archive: Epic of Virtual History」をKickstarterで資金調達中(5月27日まで)。EVE Online、WoW、FF14などバーチャルワールドの歴史をまとめたハードカバー本。

Carbon エンジン オープンソース化

EVEの基盤技術である「Carbon」エンジンのオープンソース化が進行中。6月の完了を目指しており、すでにGitHubで貢献可能な状態。

カプセラ・エッダ(Capsuleer Edda)

アイスランドの伝統に則り、EVE Onlineの歴史をヴェラム(牛革紙)にプレイヤーの血液から作ったインクで記すという壮大なプロジェクト。詩人のAndreaがEVEの叙事詩を執筆し、アイスランド語で書かれるヴェラム作品としては約700年ぶりのものとなる。FanFest参加者から血液を収集中で、17世紀のレシピでインクに変換される。Hilmarは「死ぬまでにこの本を月に送る」とも宣言した。

EVE Online ビニールレコード

Blaze Recordsとのパートナーシップで、EVE Onlineの新旧楽曲を収録したデラックス・ダブルLPの予約受付が開始。


FC Helmarが語る「EVE Forever」のビジョン

Hilmar(FC Helmar)のセッションでは、「Greater Agency(より大きな主体性)」をキーワードに、EVE Universe全体の方向性が語られた。

核心的なメッセージは以下の通り:

  • EVE Onlineを「ゲーミングプラットフォーム」として進化させる ── EVE Online、Vanguard、そして将来的にはさらに多くの窓口からNew Edenにアクセスできるようにする
  • 「One Universe, One War」── 宇宙と地上をまたぐ一つの戦争
  • 北欧神話のラグナロク(創造と破壊のサイクル)がEVEの本質と重なる ── 美しいものを作り、それが壊され、また新たに生まれる
  • エントロピーに抗うことこそが意味を生む ── これがEVEを「永遠のゲーム」たらしめる原理

まとめ:今後のスケジュール

日程内容
2026年6月9日Cradle of War リリース(EVE Online拡張)
2026年6月25日EVE Frontier Cycle 6 開始
2026年7月7日~20日EVE Vanguard Operation Avalon(アルファテスト、Steam対応)
2026年9月フォースプロジェクション&アノプレックス大規模変更
近日AT22ルール公開

Fenris Creationsとしての最初のFanFestは、3タイトルすべてが大きな転換点にあることを印象づけるものだった。Cradle of Warのミリタリーキャンペーン、Vanguardのアルファ移行、Frontierのオープンモッディング、そしてDeepMindとのAI研究パートナーシップ。「EVE Forever」のビジョンがこれまでで最も具体的な形を見せたキーノートだったと言えるだろう。

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