2026年4月末、EVE Onlineの開発元であるCCP Gamesの親会社Pearl Abyssが、CCPを経営陣(CEO Hilmar氏ら)に売却すると発表した。売却額は現金1億ドル+EVE Frontierトークンの購入オプション2,000万ドル分で、合計1億2,000万ドル。手続きは5月6日に完了予定とされている。

この発表を受けて、ストリーマーのOzが市場分析ブロガーのCroa(「Markets for ISK」運営者)およびCSMメンバーのDJ Jackをゲストに迎え、売却の経緯や今後のEVE Onlineへの影響について語った配信の内容をまとめる。


買収から売却までの8年間 ― 数字で振り返る

2018年、Pearl AbyssはCCPを2億2,500万ドルで買収した。本来は業績目標の達成に応じて追加の支払いが発生する契約だったが、CCPはその目標を達成できず、買収額は2億2,500万ドルのまま確定した。

Croaによると、Pearl Abyss傘下の約8年間でCCPが黒字を記録したのはわずか1年(2019年頃)のみ。累計損失額は約5,600万ドルに達し、Pearl AbyssはCCPに約5,000万ドルの融資まで行っていた。さらにPearl Abyssは自社のバランスシート上でCCPの評価額を減損処理(ライトダウン)している。

つまり、2億2,500万ドルで買い、5,000万ドルを追加融資し、最終的に1億2,000万ドルで手放したことになる。Pearl Abyssにとって数字上は明らかな損失だが、すでに減損処理を行っていたため、帳簿上は今回の売却で「利益が出る」形になるという。Pearl Abyss側は「CCPから長期運営MMOのノウハウを吸収できた」とコメントしているが、OzとCroaはこの説明に懐疑的な見方を示した。


なぜ今なのか ― Crimson Desertの成功とタイミング

売却の噂は2025年6月に初めてリークされており、交渉は約9ヶ月に及んだことになる。OzとCroaは当時、売却額を約1億ドルと予測しており、結果的にほぼ的中した形だ。

発表のタイミングについて、Croaは「Crimson Desertの大成功が後押しした」と分析する。Pearl AbyssのCrimson Desertは500万本を売り上げる大ヒットとなり、2億ドル以上の売上を記録。これによってPearl Abyssは財務的に余裕が生まれ、採算の取れないCCPを整理する判断が下しやすくなったというわけだ。

興味深いのは、Pearl Abyssの株価への影響がほぼゼロだったことだ。韓国のアナリストレポートでもCCP売却に言及したものはなく、Pearl Abyssにとってはせいぜい全売上の約15%を占める事業の売却に過ぎない。韓国市場の関心はもっぱらCrimson Desertの今後に向いている。


買い手はHilmar ― だが1億ドルはどこから?

買い手はCCPのCEO、Hilmar Veigar Pétursson氏を中心とする経営陣だとされている。しかし1億ドルという金額を個人で用意するのは困難であり、資金調達の背景が注目される。

Ozの分析では、EVE Frontierに4,000万ドルを投資しているVC大手のa16z(Andreessen Horowitz)が資金面で関与している可能性が高い。a16zにとって、CCPが消滅すればEVE Frontierへの投資も無価値になるため、CCP存続を支援する動機は十分にある。a16zは運用資産900億ドル規模の世界最大級のVCファンドだ。

Hilmar氏自身についても、Ozは「かなり裕福で、他の企業への投資実績も記録に残っている」と指摘。20年以上CCPを率いてきた実績と、自ら資金を投じる姿勢が投資家を説得する材料になったとみている。

売却額の内訳にある「2,000万ドル分のトークン購入オプション」については、Pearl AbyssがEVE Frontierの成功に一定の賭けを残したか、あるいはHilmar側が1億2,000万ドル全額を現金で用意できなかった結果の妥協案ではないかと推測されている。


EVE Onlineの収益 ― 実は過去最高水準

ネガティブな数字が目立つ一方で、EVE Online自体のパフォーマンスは好調だ。Croaの分析によると、EVE Onlineの12ヶ月ローリング収益は2013年の過去最高水準にほぼ匹敵するレベルまで回復しており、9四半期連続で前年同期比成長を記録している。23年目のゲームとしては驚異的な数字だ。

CCPが赤字を出し続けてきた原因は、EVE Online本体ではなくサイドプロジェクト(EVE Vanguard、EVE Frontierなど)への投資にある。EVE Online単体であれば十分に利益を出せるビジネスだというのが、OzとCroaの共通認識だ。

なお、CCP Rattatiが過去のインタビューで語ったところによると、新規プレイヤー体験を改善する以前は年間100万人の新規プレイヤーが流入していたが、離脱率は極めて高かった。23年目にしてようやく導入された初心者保護ゾーン「Exortium」など、リテンション改善への取り組みが続いている。


サイドプロジェクトの行方 ― Vanguardは危うい、Frontierは存続か

EVE Vanguard

EVE VanguardはEVE Onlineとの連携を持つFPSゲーム。OzはVanguardについて厳しい見方を示した。すでに確立されたFPS市場において、EVE Onlineのプレイヤーベースだけでは競争力のある規模に達しないという判断だ。DJ Jackも「エクストラクション・アドベンチャー・FPS・MMO・RPG」と肩書きが増え続けている点を皮肉まじりに指摘している。

独立後のCCPが赤字を許容し続ける余裕はなく、Vanguardが早期に収益化の道筋を示せなければ、プロジェクト存続自体が危うくなるとOzは予測した。

EVE Frontier

一方、EVE Frontierに対する評価は比較的ポジティブだ。ブロックチェーンベースの「永続的なゲーム」を目指すコンセプトで、プレイヤーがMODを作成・所有し、トークンを通じて現実の資金を出し入れできる仕組みが設計されている。

Ozは当初ブロックチェーン・Play to Earnの概念に否定的だったが、開発チームとの対話や実際のプレイを通じて考えを変えつつあると語った。Croaも「Frontierは外部資金(a16zなど)で開発を続けられるだろうし、EVE Onlineと同じCarbonエンジンを共有しているため、技術的なシナジーもある」と分析している。


独立は吉か凶か ― EVE Onlineプレイヤーへの影響

ポジティブな見方

OzとCroaは共に「EVE Onlineにとっては良いニュース」という見解で一致した。理由は以下の通り。

Pearl Abyssの影響は実際にはプレイヤーが思っているほど大きくなかった。マイクロトランザクションの増加はゲーム業界全体のトレンドであり、Pearl Abyssが強制したものではない。独立により、HilmarのパッションプロジェクトとしてCCPがより自由に動ける可能性がある。

Croaはまた、Pearl Abyssが果たした3つの功績として「CCPの運営に干渉しなかったこと」「3年前に収益化の改善を強く求めたこと(サブスクリプション料金30%値上げにつながった)」「その結果CCPが新たな収益源を模索するようになったこと」を挙げた。

リスク

最大のリスクは「後ろ盾の喪失」だ。Pearl Abyss傘下であれば、赤字が続いても親会社が支えてくれるセーフティネットがあった。独立後のCCPには、早期に黒字化するか、新たな投資家や融資先を見つけるかの選択肢しかない。

Hilmarは資金提供者に対して3〜5年の事業計画を提示しているはずだが、過去5年間の赤字実績を前にして投資家を納得させるのは容易ではない。Croaの見立てでは、投資家たちは「EVE Onlineのプレイヤー数が倍増する」といった楽観的な前提ではなく、CCP自身がコントロールできる範囲での収益化計画を求めているだろうとのことだ。


サブスクリプション料金は下がるか?

Ozは「$20から$15への値下げ」の可能性に言及し、「過去の過ちの修正になる」「Pearl Abyssのせいにして面目を保てる」と期待を示した。

しかしDJ Jackは「長期購入なら実質$6程度で遊べる現状のセール戦略との整合性が問題になる」と反論。Croaも「値下げで増える購読者数が減収分を補えるかは、CCPにしかわからないデータ次第だ」と慎重な姿勢を見せた。

一方でDJ Jackは地域別価格の導入を提案。ブラジルなど購買力の異なる地域でのサブスクリプション料金を個別に設定し、プレイヤーベースの地理的拡大を図る方法が現実的ではないかと述べた。


財務情報の今後

Pearl Abyssの四半期決算にCCP関連の数字が含まれる時代は終わる。今後はアイスランドの法的要件に基づく年次報告書のみが公開情報源となる。

Croaによると、CCPの2025年度報告書は5月12日(Fanfest前日)に公開される見込みで、Croaは空港ラウンジでレビュー記事を書く予定だという。年次報告書からは、ゲーム内通貨の未使用残高、取締役報酬、サブスクリプション収益などが引き続き確認できる。

また、独立企業になることでプレイヤー数のリークが期待できるかもしれない。過去にCCPが独立企業だった時代にはプレイヤー数が公開されていたが、Pearl Abyss傘下では非公開だった。


Fanfestでの注目ポイント

5月中旬に開催されるFanfest 2026について、Croaは「売却から1年近く準備期間があったはずなので、”まだ何も言えない”という言い訳は通用しない。経営陣のボディランゲージや自信の度合いを見るのが楽しみだ」とコメント。Croaはチャリティディナーの場でHilmarに直接質問する予定だという。

OzはFanfestでメインステージのプレゼンテーションを担当し、「Politics, Patches and Panic: Anything that Impacts EVE Markets」と題した講演を行うほか、Twitchでの公式配信のホストも務める。


新規プレイヤーへのメッセージ

配信には通常の数十倍にあたる約6,000人の視聴者が集まったこともあり、Ozは新規プレイヤーに向けて熱いメッセージを送った。

「Redditに行ってISK/時間の数字を見るな。他人に”遊び方が間違っている”と言われても気にするな。自分が楽しいと思える活動を見つけることが、EVE Onlineを長く続ける唯一の方法だ」

DJ JackもBrave Newbiesのモットー「Fun per Hour(楽しさ/時間)」を紹介し、初心者にはEVE University、EVE Rookies、各種Discordコミュニティへの参加を推奨。ただし「Absolute Orderだけには入るな」という点では全員が一致していた。


本記事はストリーマーOzの配信内容をもとに作成しています。

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