
Fanfest 2026の2日目、土曜日の朝一番に行われたEVE Vanguard専用キーノート。登壇者はFC Rattati(エグゼクティブプロデューサー)、FC Collins(ゲームディレクター)、FC JAYESS(クリエイティブリード)の3名。前日のメインキーノートでは概要に留まっていた部分が、このセッションで大幅に深掘りされた。特にOperation Avalon後のロードマップ、EVE Onlineとの経済ブリッジの具体的な仕組みが初めて明かされ、会場の反応も非常に熱かったようだ。
「永遠のシューター」── なぜVanguardを作るのか
FC Rattatiが冒頭で語ったのは、Vanguardを作る根本的な理由だった。
業界への不満がその出発点にある。ゲームが早期にサービス終了する、十分なプレイヤーを集められず死んでいく、シーズンリセットで積み上げたものが消える──そうした現状に対し、EVE Onlineが23年間証明してきた「永続性」をFPSにも持ち込みたいという思いだ。
Rattatiは自身がFPSプレイヤーであることを強調しつつ、こう語っている。リーダーボードには興味がない、バトルパスにも興味がない、自分の行動が何かに反映される「意味のある殺し」がしたい、と。デプロイして、スーツと武器を選んで、目標を達成して、それが何か大きなものを動かしている──そんなBattlefieldの世界地図のようなゲームを大手AAAスタジオが作ってくれることをずっと待っていたが、結局誰も作らなかった。だから自分たちで作る、というのがVanguardの原動力だ。
DUST 514からの教訓
Rattatiは過去作品からの学びについても率直に振り返った。
DUST 514について「欠陥のある傑作(flawed masterpiece)」と表現。コアメカニクスの問題で多くのプレイヤーが早期離脱したこと、PS3限定だったプラットフォーム選択の誤り、Co-op PvEの不足など、複数の反省点を挙げた。一方で、DUSTが築いた「コミュニティ」こそが最大の遺産だとも述べている。DUSTのサービス終了後、多くのプレイヤーがEVE Onlineに移行したことが、ゲームの枠を超えた絆の証拠だという。
Project Novaについても触れ、Co-op PvE/PvPという新しい入口を試みた実験であったとした上で、New Edenシューターの本質は常に「リスクとリワード」「計画が報われること」「資源の獲得」にあると結論づけた。
これらの経験を踏まえ、Vanguardでは以下の方針が明確にされている:
- PCプラットフォームを主軸に据える(ホームコート)
- Unreal Engineを最新に保ち、独自の改造で乖離しない
- コンテンツの大量投入で競争するのではなく、エマージェントゲームプレイとPvE/PvPのリスクを核にする
- 経済システムはシンク&フォーセット設計で最初から構築
- 小規模チームでも持続可能な「永遠のゲーム」を目指す
「エクストラクション・アドベンチャー」── Vanguardの核心
Vanguardのゲームバイブル(設計聖典)の冒頭に書かれている定義は「エクストラクション・アドベンチャー」。
デプロイ→調査→レイド→ルート→抽出(Extract)というコアループは、EVE Onlineの「アンドック→資源採取→PvE/PvP→ドック→製造」のサイクルと本質的に同じだ。このループをまずアルファテストで徹底的に磨き上げる方針で、Operation Avalonではプログレッション(成長要素)よりも「最初の1秒、最初の1分、最初の1時間」の手触りにフォーカスしている。
Rattatiは「EVEプレイヤー専用のゲームではない」とも明言。リッチで本格的なSF世界を楽しみつつ撃ち合いたい、すべてのFPSプレイヤーに向けたゲームだとしている。
ウォークローンの物語 ── FCJSが語るVanguardの世界観
クリエイティブリードのFC JAYESSが、Vanguardの物語を時系列で解説した。
DUST後のウォークローン
DUST 514の出来事の後、ウォークローンは強大になりすぎたと見なされ、New Edenから粛清される。データバンクに閉じ込められ、殺され、散り散りになった彼らは弱体化し、そして当然ながら激怒している。
デスレスの介入
デスレス(The Deathless)が古代ジョヴィアンのクローン技術を発見し、先進的なウォークローンプラットフォームを構築。「グラフト」と呼ばれる強化機能を組み込む。デスレスは失われたデータバンクを探し出し、この新技術で実験を始めた。過去のプレイテスト「Groundbreak」「Solstice」はこのデスレスの実験だったという設定だ。
しかしこれがデスレスの失策となる。目覚めさせたウォークローンたちは──タノス暗殺者、帝国各地の缶詰戦士たち──隷属を受け入れない精神の持ち主ばかり。復讐心に燃え、遺産を取り戻すべく、彼らはフルクラムから脱出する。
ウォークローンの「自由の三本柱」
脱出したウォークローンが構築する3つの基盤:
- ウォーバージ「アヴァロン」 ── 物理世界で暮らすための宇宙船。仮想空間に閉じ込められることを拒否した彼らの「家」
- レゾナント・ガーデン ── 分散型データバンク。精神の保存場所を自分たちでコントロールし、他者に削除されない仕組み
- ハーモニック・ブリッジ ── Upwellの産業用テレポート装置を盗んで改造したネットワーク。デプロイと抽出に使用
イージス(AEGIS)とネメシスプロトコル
ウォークローンの脱出を察知したイージス(CONCORDの秘密工作部門、いわば「宇宙CIA」)がネメシスプロトコルを発動。憤怒に満ちたAIを「エンジン」と呼ばれる機械に搭載し、ウォークローン狩りを開始する。
Operation Avalonの物語はここから始まる。ウォークローン(=プレイヤー)は、ネメシスの正体と弱点に関する情報を持つと思われるマップに降下。ハーモニックブリッジが地面に打ち込まれ、直後にウォークローンが到着。救難信号が発信され、イージスがハーモニックブリッジを宇宙から破壊し始めるまでの時間との戦いが始まる。
ネメシスエンジンは将来的にプレイヤーにとっての「倒すべきドラゴン」となる究極の敵。その残骸からウォークローンの遺産を再建していくことになる。
Operation Avalonの詳細 ── マップとゲームプレイ
FC Collinsが具体的なゲームプレイの詳細を解説した。
Lost Convoyマップ
7つの異なるポイント・オブ・インタレスト(POI)が配置されたマップ。それぞれが異なる体験を提供する:
- 残骸の散乱地帯 ── マップ中央
- 軍事施設(ミリタリーコンパウンド) ── 増援が次々と投入される激戦区
- Upwellコマンドブロック ── 完全探索可能な巨大施設。複数のアクティビティと高品質ルートを内蔵
- Upwell燃料タワー ── 最高レベルのルートが眠る場所。ランダムなタイミングでRDV(軌道降下船)からMordu’s Legionの予備隊リーダー(赤いデカールのスーツ)が降下。彼を倒してコードを入手し、ドアを開けて内部をレイドする。塔の頂上では将来的にネメシスエンジンと戦うことになるが、当面は複数のヘビーオプレッサーが待ち受ける
Collinsは「1スクワッドでは攻略できないかもしれない」と述べ、複数チームの協力プレイを推奨。コミュニティに対して「1サーバーで何人協力して塔を攻略できるか見せてくれ」と挑発していた。
武器の詳細
武器のクオリティについて詳しく紹介があった:
- ミンマターSMG ── 荒々しく、汚れ、使い込まれた質感。ミンマターの武器は壊れたらボルトを開けて内部から修理する
- アマーレーザーライフル ── 対照的に洗練されたデザイン。「Appleが武器を作ったらこうなる」との表現で会場を沸かせた。クローズドアーキテクチャで、壊れたら新しいのを買うしかなく、しかも2倍の値段。パルスDMRとフルビームDMRの2バリエーション。横のフィンが開いてクリスタルを排出・装填するリロード機構。オーバーヒート管理も必要
抽出メカニクス
ハーモニックブリッジはUpwellの産業用テレポート装置をウォークローンが改造したもの。抽出時にはプレイヤーが焼き尽くされる演出が毎回発生する。FCJSの「プレイヤーを生きたまま燃やしたらどうだ?」というアイデアが採用されたとのこと。
Operation Avalon後のロードマップ
ここからがキーノートの目玉。Collins が「この先の話で俺たちを好きになるか嫌いになるか」と前置きした上で、2つの大きな発表を行った。
1. ミリタリーキャンペーンへの参戦(2026年11月アップデート)
前日のメインキーノートでFC Okamiが発表したEVE Onlineのミリタリーキャンペーンシステムに、Vanguardからも参加可能になる。7月のOperation Avalonに続き、2026年11月にもう1回アップデートが入り、地上戦がキャンペーンに組み込まれる。
具体的な仕組み:
- EVE Onlineのプレイヤーが宇宙でキャンペーン目標を達成するのと同様に、Vanguardプレイヤーも地上で目標を達成してキャンペーンを進行させる
- 各帝国に徴兵(Conscript)でき、帝国ごとに固有のナラティブ、目標、進行度、タイトル、報酬、ワールドステートが用意される
- 個人の目標達成で個人のマイルストーンが進み、一定数のプレイヤーが目標を達成するとキャンペーン全体が進行する
- Vanguard側で見えるもの:Vanguardの目標一覧、EVE Online側の目標の完了状況
- EVE Online側で見えるもの:EVEの目標一覧、Vanguard側の目標の完了状況
Vanguardで発動するワールドステートの例:
- 希少な商品を売る新ベンダーの出現
- 製造効率の変化
- キャンペーンの物語に沿った特別エクスペディション(複数目標のクエストライン)
- ルートや敵の出現率を変えるマップ修飾子
- 将来コンテンツの方向性決定 ── 例えば「カルダリが最初にキャンペーンを完了したら、次に実装される武器とスーツはカルダリ製になる」
個人報酬:
- 資源バンドル(製造支援)
- スペシャルキーカード(例:ミンマターチャンピオンだけがアクセスできる秘密ラウンジ)
- 武器、アップグレード、ブループリント、ファクション武器バリアント
- タイトル、スキン、コスメティクス
Collinsはこのシステムの狙いを端的に表現していた──「Vanguardプレイヤーが宇宙の神々(カプセラ)に向かって『カルダリの目標を完了しろ!』と拳を振り上げ、EVEプレイヤーがVanguard部隊を集めて特定の目的のために目標達成を促す」。One Universe, One Warの実現に向けた具体的な一歩だ。
2. 経済ブリッジ:「墓場」コントラバンドシステム
これがキーノート最大のサプライズだった。
基本コンセプト
EVE Onlineで船が撃沈されると、モジュールやアイテムの一部が「墓場(Graveyard)」に落ちる。Vanguardプレイヤーがその墓場にアクセスし、失われたものを回収してEVEプレイヤーに売り戻せるようにする、というシステムだ。
Vanguard発表時から多くのプレイヤーが「惑星に降りて自分の失ったものを取り戻せたら」と言っていたが、それを実現するだけでなく、他人の失ったものも回収できる点がポイント。
仕組みの詳細
- Vanguardプレイヤーがデプロイ→レイド→ルート→抽出のループで「コントラバンド(Contraband)」という資源を獲得
- コントラバンドはマップ上に落ちているか、特定のアクティビティで獲得
- Vanguardプレイヤーはバスティオンやウォーバージ(EVE Onlineの宇宙空間に表示されるインフラ)に帰還
- EVEプレイヤーがこれらのバスティオン/ウォーバージにドッキングし、Vanguardプレイヤーとコントラバンドを取引
星系ごとの墓場
コントラバンドはグローバルではない。 各星系に固有の墓場があり、その星系で何が失われたかを記録している。これにより物語が生まれる──「あの星系で巨大な戦闘があって大量のモジュールが失われた」と聞けば、Vanguardプレイヤーはその星系のウォーバージに再配置してコントラバンドの採掘を始める。
Collinsの例え話が秀逸だった。「未開封のポケモンカードパックが開封済みより価値があるように、特定の戦闘で失われた特定のモジュール群から引き出せるかもしれないコントラバンドには、それ自体に価値がある」。
取引通貨:ISKではなくミュータプラズミド
DUST 514の反省点として、ISKベースの経済ブリッジではスケールが合わないことが挙げられた(アサルトライフルと主力艦が同じ価格帯では成立しない)。
そこでVanguardでは:
- EVEプレイヤー → Vanguardプレイヤー:ミュータプラズミド(Mutaplasmids)を提供。Vanguardプレイヤーはこれを使って武器製造にランダムなステータスロールを付与できる
- Vanguardプレイヤー → EVEプレイヤー:コントラバンド(EVEプレイヤーがVanguardとの取引でしか入手できない)を提供
つまり、Vanguardプレイヤーがより良い装備を求めるならEVEプレイヤーと取引する必要があり、EVEプレイヤーが墓場の回収品を求めるならVanguardプレイヤーと取引する必要がある。双方向の依存関係だ。
開発の階層的アプローチ
FC Collinsは、Vanguardの開発を3つのレイヤーで構築していく方針を改めて整理した:
レイヤー1(現在~アルファ):コアシューター デプロイ→レイド→ルート→サバイブ→抽出のコアループを磨く
レイヤー2(アルファ以降):MMO要素の追加 エクスペディション、ベンダー、プレイスタイル、ワールド、バスティオン
レイヤー3(将来):EVE Online統合 ミリタリーキャンペーン、経済ブリッジ、フリーランスジョブ
「他のゲームにはできないことができる。23年間、何十万人もプレイしているMMOにいきなり接続できるゲームは他にない」というCollinsの言葉が、このプロジェクトの独自性を端的に表していた。
技術的な橋渡し:DUST時代との違い
Rattatiは技術面での進歩にも触れた。DUST 514のEVEリンクは「紐と缶で作ったようなもの」だったが、今回はQuasar接続(APIベース)を使い、2022年からAIRキャリアプログラム、コーポレーションプロジェクト、フリーランスゴールなど、毎回のオペレーションでブリッジをテストしてきた。アドバンテージリンク、コンボイリンクなど複数の実験を経て、技術的には戦闘テスト済みの状態にあるという。
まとめ:今後のスケジュール
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年7月7日~20日 | Operation Avalon(アルファテスト、Steam対応) |
| 2026年11月 | ミリタリーキャンペーン統合アップデート(地上戦がEVEキャンペーンに参加可能に) |
| 2026年以降 | 経済ブリッジ(コントラバンドシステム) 構築開始 |
| 将来目標 | 24時間365日の常時稼働ライブサービス化 |
Vanguardキーノートは、前日のメインキーノート以上に具体的で肉厚な内容だった。特に「墓場」コントラバンドシステムは、EVE Onlineの経済とFPSを有機的に接続するアイデアとして非常に面白い。星系ごとにコントラバンドの内容が異なるという設計は、大規模戦争が起きた星系にVanguardプレイヤーが殺到するという新たなダイナミクスを生むだろう。
11月のミリタリーキャンペーン統合で「One Universe, One War」がどこまで実感できるものになるか、そしてコントラバンドシステムがEVE経済にどんな波紋を広げるか。今後も注目していきたい。
Share this content: